眠れぬ夜は君のせい
俺が1歩1歩近づくたび、あげはも逃げるように1歩1歩と下がって行く。

「どうして逃げる?

逃げる理由でもあるのか?」

あげはと距離を縮めようと思っても、彼女に逃げられる一方である。

何なんだ、この状況は。

俺はイラついて、あげはに手を伸ばした。

「――やっ…!」

あげはの腕をつかんだ瞬間、俺は気づいた。

「――あげ、は…?」

目の前の光景が信じられなくて、俺はあげはの名前を呼んだ。

彼女の目は、真っ赤だった。

暗闇に浮かぶ鮮やかな赤は、白い肌のあげはによく映えていた。
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