眠れぬ夜は君のせい
あげはが俺の首筋に顔を埋めた。

ザクッ…!

そこに彼女の牙が入ったのだろう。

一瞬の痛みに、俺は思わず顔をしかめた。

これで終わる。

俺の人生は、ずいぶんとつまらないものだったな。

他人事のように、俺はそんなことを思った。

ゴクリと、あげはが喉を鳴らした。

ああ、吸われているんだなと俺は思った。

あげはは何度も喉を鳴らし、俺から血を奪う。

その様子から、彼女は血に飢えていたんだなと俺は思った。

そう思ったのと同時に、甘さにも似た痺(シビ)れが俺の躰を走った。
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