眠れぬ夜は君のせい
血を吸われたから、てっきり死ぬんだろうと思っていた。

けど、俺は死ななかった。

あげはが俺から離れる。

再び見下ろされる赤い目に、
「――あげ、は…?」

俺はあげはの名前を呼んだ。

…ああ、俺は生きている。

でも、俺は何故生きているのかよくわからない。

「血を吸われたから死ぬなんて、思わないでください」

呟くように言った後、あげはは唇の端についた血を親指でぬぐった。

「わたしがいつも人殺しをしているなんて、思わないでください…」

あげはは寂しそうに言うと、親指でぬぐった血を口に含んだ。
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