眠れぬ夜は君のせい
パーティー会場は、いつも通り金持ちが集まっていた。

これだけ集まっても自慢話しか話のネタがないのかよ。

あまりの退屈ぶりに、笑うことなんて無理な話だ。

もう帰ろうかと思っていたら、
「正宗様」

名前を呼ばれた瞬間、俺はチッ…と心の中で舌打ちをした。

せっかくの帰るタイミングを壊しやがった。

「これはこれは章子お嬢様」

派手なドレスに身を包み、下品な化粧をした婚約者――章子が俺に向かって微笑んだ。

彼女から漂う香水の匂いが俺にまとわりついてきて、鬱陶しくて仕方がない。

「正宗様も参加していらっしゃいましたのね」

章子は嬉しそうに俺に声をかけてきた。
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