眠れぬ夜は君のせい
彼女がどこの家柄かなんて忘れたが本当によくやるよなと、俺は思った。

化粧をしている顔の下はとっくの昔にお見通しだ。

金と家柄のことしか考えていないくせに、それを手に入れるために演じる努力をしていることだけは褒めてやろう。

「でも、今から帰るところだ。

この後予定があるからな」

そう言っている俺も、人に平気でウソをついて演じている。

バカバカしいのもいいところだ。

「それなら、吸血鬼にお気をつけください」

章子が言った。

「吸血鬼?」

その言葉の意味がわからなくて、俺は聞き返した。

それは一体、どう言う意味なのだろう?
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