渇いた詩
手すりに背を預けて歌った。


ただただ、がむしゃらに。



マネージャーに対する対抗意識からかわざと音程を外して音痴に歌った。


その歌は俺が初めて自分で作詞、作曲した歌。




「へったくそぉ!!!」



階段の上を見上げると男がいた。



そいつはゆっくり階段を降りて俺のとこへ来た。



「あんた、ジャイアン並みに音痴だな」



屈託なく笑ったその顔に腹が立った。



俺が最近笑ったのはいつだ?



「うっせぇな。なんだよ、てめぇ」



「ここは憩いの場所なんだ。あんたのその下手な歌、辞めてくれる」



「お前、誰に向かって音痴って言ってる訳?」



こいつ、俺のこと知らないのか?
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