魔王様はボク
綺麗な満月が出ている夜。
ボクはいつものように、自室の窓から月を見上げていた。
窓際の小さなスペースに座り、秋風を堪能するのはどこか優雅に感じる。
真っ暗と言うよりは真っ黒に染まった空の中、整然とと輝いている光の球。
月を見るのは好きだ。
いつか月に吸い込まれないかなと思う。嘘だけど。
もはや習慣となったこの行為。
こうしているうちにいつも通り、お風呂に入れと家族の誰かが呼びにくる。
「麗音、お風呂いいよ。」
そう言いながら部屋に入って来たのは凜音だった。
髪をバスタオルで拭きながら、ボクを真っ直ぐ見ている。
「うん、わかった。」
ボクは窓際から下りた。
そんなボクの様子を見て、凜音は少し呆れたような表情を浮かべた。
「また月見てたの?」
ボクは苦笑しつつ、ドアに近づいた。
「ほら髪ちゃんと乾かしてね。」
凜音の髪はふわふわであるべきだ。
ドアで凜音とすれ違うとき、凜音の手からタオルを取り、髪を拭いてあげた。
凜音は目をつぶり、大人しくボクに任せている。
可愛い…。
ボクを信頼しているであろうからこその行動だ。
ある程度拭いたあたりでタオルを凜音に返した。
「明日模試だよ?」
嫌なことを思い出させてもらったところでボクはうん、と頷きつつ部屋から出た。