魔王様はボク

綺麗な満月が出ている夜。

ボクはいつものように、自室の窓から月を見上げていた。

窓際の小さなスペースに座り、秋風を堪能するのはどこか優雅に感じる。

真っ暗と言うよりは真っ黒に染まった空の中、整然とと輝いている光の球。

月を見るのは好きだ。

いつか月に吸い込まれないかなと思う。嘘だけど。

もはや習慣となったこの行為。

こうしているうちにいつも通り、お風呂に入れと家族の誰かが呼びにくる。


「麗音、お風呂いいよ。」


そう言いながら部屋に入って来たのは凜音だった。

髪をバスタオルで拭きながら、ボクを真っ直ぐ見ている。


「うん、わかった。」


ボクは窓際から下りた。

そんなボクの様子を見て、凜音は少し呆れたような表情を浮かべた。


「また月見てたの?」


ボクは苦笑しつつ、ドアに近づいた。


「ほら髪ちゃんと乾かしてね。」


凜音の髪はふわふわであるべきだ。

ドアで凜音とすれ違うとき、凜音の手からタオルを取り、髪を拭いてあげた。

凜音は目をつぶり、大人しくボクに任せている。

可愛い…。

ボクを信頼しているであろうからこその行動だ。


ある程度拭いたあたりでタオルを凜音に返した。


「明日模試だよ?」


嫌なことを思い出させてもらったところでボクはうん、と頷きつつ部屋から出た。

< 2 / 48 >

この作品をシェア

pagetop