魔王様はボク

まあ強くなっているわけだし、難しいことはいいやと結論づけておく。

ボクは再び道なりに進み始めた。
また魔物が出て来ないかなと期待しつつ。

さっきのはゲームでいうと、かなりストーリー初期のモンスターだと思う。
王様から魔王退治命じられて城から出たときらへんに出るやつ。
経験値が2とか4とか、あってないようなレベル。

なんかこう考えると、本格的にRPGのようだ。
ロールプレイングゲーム。
カタカナにすると長い。

どうでもいいけれどカタカナは小説で書くと文に混じらない。
それだけが浮いて見えてしまう。
強調したいときにはいいかもしれないけど、仲間外れのようで可哀相。
なんて思ってもないことを文字として並べてみる。

ああ、本当にどうでもいい考えだった。

魔物が出てくる等のアクションがないため、心が暇でしょうがない。
体は動いているから暇じゃないよ。
ボクが心で考えなくても、道にはみ出している草葉を押しのけ、周囲をキョロキョロと見回し、足は止まらないで動く。
体は心より真面目でちゃんとしている。

もしそうなら、今こうして考えているのは当然心ということだ。
今『ボク』という一人称を使っているのは心。
身体はもしかしたら違う一人称を使いたいかもしれない。
聞いてみようか。
おーい、身体。
何か希望はあるかい?
…おやシカトだよ。
なんてね。

進行方向から少しだけずれた茂みからガサリと音がした。

このどうでもいい考えはここでやめて、意識を現実に集中しよう。

茂みの揺れが見えた。
ボクは立ち止まり、音の主を待つ。
音は大きくなり、揺れは近づいてきている。

今度は何がボクをお出迎えしてくれるのか。
先程の魔物から考えて、あまり強くはないのかな。
ゲームでは付近の魔物は大体同じような強さだし。
幾分強くなっているなら、油断と過信さえしなければ大丈夫。

しかしボクはすぐに、これはあくまでゲーム、空想の常識であると考えを改めることになった。

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