魔王様はボク

ボクを指差し、人懐っこそうな顔に満面の笑みを浮かべている。

亜麻色の髪に緑、いやエメラルドグリーンの目。
布で出来た軽そうな服を着ている。
身長はボクよりも少し大きいくらい。
男子の背の順で大分前に立ってそう。
人間観察炸裂。


「ずぅーっと探してたんだぁ。」


やや舌っ足らずな子供っぽい口調と、声変わりしていないような高めの声で、話しながらボクに歩み寄って来る。

中学生の男子に見えるその容姿は、一見普通に駅前を歩いていそうな姿だ。
ただ一つ、背中の灰色がかった大きな翼を除いては。
どうやら本当に生えているようだ。

ん、待てよ。
探してたって、なんで?
知り合いなわけないし。
知らない間に出来てた知り合いってのもたまにあるけど、この世界に来たばかりのボクにはそれもありえない。


「誰?」


ボクが首を傾げ、訝しげな表情で問い掛けると、少年はそういえばと言わんばかりに手をポンッと合わせた。


「申し遅れましたぁ。」


少年はそう言いながら胸に手を当て、ペコリとお辞儀をした。


「僕は上級魔族のフェイ・クラウドと申します。貴女にお願いがあってここに来ました。」


急にきちんとした口調になった、フェイという少年。

うむ、彼もボクと同じく人前でキャラを作るタイプだなと確信してみる。

面接など重要なところできちんとする術を身につけてる。
面接練習してるとよく先生が、普段の態度が出るからきちんとしておけっていうけどそうでもないと思う。
普段こんなのだけど、面接受けて高校受かってるわけだし。

閑話休題。

それはそうと、上級魔族とかという分からない単語が生まれてしまっているが、これは聞いてもいいのかな。
ちょっと保留にしとこ。
物事にはタイミングというものがある。
下手に聞いて不信感を生んでもなんだし。
この少年の目的も分からないわけだし。
それより。


「お願い?」


ボクに?
魔族とやらが?
何を?

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