魔王様はボク
先ほどのフェイの『お願い』内容からすると、ボクは魔族だという感じだったけれど、よく分からない。
だから聞いたけれど、案の定か。
「…え、と、それはどういう意図での質問ですか?」
意図?
なんかの策略だと思われてしまったのかな。
「いやそのままの意味で。」
「はあ…。」
曖昧に答えるフェイ。
うむ、なんと言ったらいいものか。
不審がっているのが分かる。
だって本当にそのままの意味なのだよ。
真実なのに信じてもらえないのは悲しい世の中の摂理だな。
嘘だけど。
魔族とか人間とかよく分からない。
だって魔族なんていなかったし。
ん?
そうかそう言えばいいのかな。
えーと。
ボクはヘラッとした笑いを顔に浮かべた。
「ボクが住んでいた所は、人間とか魔族とかっていう違いが特になくて、さ。旅に出てみて、なんかあるみたいってことくらいしかまだわかんないんだ。だから教えてほしいなって…。」
早口でまくしあげてみたが、大丈夫だろうか。
というか魔族とか人間の区別が特にないって、そんな場所なかったらどうするつもりだよ。
しかもどこだよそこ!
なんかあるみたいって何。
曖昧過ぎるでしょ。
どんだけボク馬鹿なのよ。
これかなり危うい嘘だぞ。
テンパってるなボク。
フェイの反応を伺う。
納得したようなしてないような。
はっきり何とは断定出来ない表情。
相手が何考えてるか予測するのは、昔から苦手だ。
ボク自身がそうしているように、心と言葉は違うものに出来る。
相手には分からない。
大丈夫かな。
「なるほど、そうだったんですね。それは失礼しました。」
やがてフェイはボクの心配をよそに、にっこりと笑った。
「もちろんお教えしますよ。道中でもよろしいでしょうか。」
それを本当に信じたのかは分からないけど。
なんとかなりそうではあるってことだろうか。
「もちろん。あと、」
フェイは首を傾げた。
さっきから気になっていたのだが。
「敬語じゃなくていいよ。なんか話しづらいかな。」
同じくらいの年だろうに、上と敬われるのは心なしか息苦しい。