魔王様はボク
「で、話を戻すけど、低級魔族、中級魔族を合わせて魔物って呼んでるんだぁ。で、上級魔族、特級魔族を魔族って呼ぶよぉ。」
つまり、魔族っていう一くくりの中に魔族と魔物と二つのグループがあるってことか。
一瞬『?』が頭に浮かびそうな面倒臭い話だな。
どうでもいいけど、面倒臭いって言葉と粘土臭いって言葉は似てるよね。
…本当にどうでもいい話だ。
しかもそんなに似てないし。
どうやら面倒臭さが顔に出ていたようだ。
フェイが再び苦笑する。
「なんかねぇ、昔の上級、特級魔族達は、低級、中級魔族を魔族だと思いたくなかったんだってぇ。で、今の面倒臭いことになってるよぉ。」
なるほど。
自分は偉いと思っている人程高いプライドというやつですな。
確かにあれは高い奴程面倒臭い。
「でもまあ、理解さえしてしまえば楽な呼び名ではあるよねぇ。」
それは確かに。
四段階よりは二段階の方が簡単だな。
魔族、魔物。
うん、簡単。
「魔物は知能が低い奴が多くて、しかも血気盛んだから、気をつけないと僕達にも襲い掛かってくるんだぁ。」
ああ、それは今日すでに実体験済みだよ。
丸いのと熊のに迫られたし。
「魔族は僕らみたいに人間みたいな姿をした奴らもいるし、顔が動物って奴もいるしねぇ。でも、皆それなりに頭いいから。」
フェイの言う動物がボクが知っているものと同じかどうかは分からないが、ひとまず人型の魔族に突然襲われるという事態はなさそうだ。
頭がいい生物は、大概自分に不利益なことはしない。
ああ、でもこちらの普通は分からないから一応気をつけておこう。
知性があるからこそ、人は生きる意味だの自分の価値だの、余計なことを考えるわけだ。
黙って生きれればいいものを。
なんて言ってるボクも知性があるからこそ、こんなこと考えてるんだけどね。
ふとフェイの皿が空になっていることに気づく。
パンもない。
そしてそれに比例して、いつの間にやらボクの手が止まっていたことにも気づいた。
ボクは再び食事を再開する。
「魔族と魔物の頂点、それが魔王様なんだぁ。」