魔王様はボク
「…。」
まるで魔女のような服に身を包んだ猫。
黒猫なのだが黒い服を着ているため、視覚的にもとても見づらい。
特に目立つのは魔女帽の先についた月形の銀の飾り、首もとについた大きな鈴。
そして顔は目だけが赤く輝き、口は歯を剥き出して不敵に笑っている。
背中にはいかにも悪魔という感じの黒い翼が生えており、お湯の上、湯舟の上に浮いている。
おっと、思わず普段から磨かれている人間観察を冷静に行ってしまったよ。
人間じゃないか。
でも普通の猫でもないようだ。
「…ニャ!?もっとこう、いい反応してほしいニャ!!」
猫の方が驚いている。
今からでも遅くないならキャーとか叫んでみようか。
やらないけどね。
「だってさぁ、出て来たのが猫だし…。もっと怖い、バ〇オ〇ザードみたいなのが出てきたら、キミの言うもっといい反応が出来てたかもしんないけど…。」
映画は怖くなかったけどね。
実際に会ったことはないから、その時どんな反応をするか分からないや。
閑話休題。
可哀相だから猫さんに意識を戻してあげよう。
「うぅ…。こんな冷めた人に会ったのは初めてだニャ…。」
思ったよりボクの反応はこの猫さんにダメージを与えたみたいだ。
しゅん…とうなだれているところを見ていると、思わず撫で回したくなる。
嘘だけど。
本当に嘘だよー。
そこまでKYではないさ!!
「それでキミは誰?」
話が一向に進まないと思ったボクは猫に発言を促した。
「そうだったニャ。現実逃避してる場合じゃなかったニャ。」
何やら自分の役割を思い出したらしい。
改めましてって顔つきになった。
「ニャーは君の願いを叶えに来たんだニャ。」