魔王様はボク


「それにしても、レオンがいたとこって凄いんだねぇ。さっき僕が言ったことも、魔族なら皆知ってるのにぃ。」


「そうだね。でも、ホントに魔族とか魔物とかいるなんて全然知らなかったよ。人間だけだと思ってた。」


嘘は言ってないよ、うん。
その通りだからね。
魔族はいなかった。
人間が世界に君臨してるなんて思い込んでる世界に住んでたわけだし。

ふと窓から外を見るとすっかり暗くなって、黒しか見えない。
結構時間が経っていたようだ。


「レオン、お風呂入りなよぉ。僕お盆置いて来るからさぁ。」


フェイにそう助言され、ボクは言う通りにすることにした。
うん、と頷きながら立ち上がった。
備え付けのお風呂に向かう。


「覗いたりしないから安心してねぇ。」


それは言わなくてもよかったんじゃないかなと思うけれど。

ボクは小さめの脱衣所に入りドアを閉めた。
学ランのボタンを外していく。

何気なく脱衣所にあった鏡に目を向けると驚いた。

目が青くなっている。
マリンブルーとでも言うんだろうか。
まるでカラコンでもつけたかのように青。
自分の目ではないようにも思えてしまう。
ちょっと感動してたりもするが。

しかし、そういえば現時点で視力の方はなんの問題もない。
猫が忘れてたのだろうか。
ありえるな。
なんかどこかが抜けていそうだ。
自転車の鍵とか落として職員室まで取りに行く羽目になるタイプだな。

ボクはそんなことをぼんやりと考えながら服を脱いだ。
長くなった髪が肌に触れてくすぐったい。

お風呂のドアを開けると、それなりの広さが迎えてくれた。
シャワーもあり、湯舟もある。
湯舟には湯気がふんだんに使われていそうなお湯が贅沢に沸かしてあった。

そのお湯にゆっくりと浸かった。
今日の疲れが取れていく感覚に包まれ、ボクはため息をついた。

両手でお湯を掬ってみる。
薄桃色に染まっており、ほんのり甘い匂いがする。
入浴剤とかだろうか。

ほどよく眠くなってくる環境だ。

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