魔王様はボク
「考える時間が必要ニャよね。もし決心がついたニャら、」
猫はどこからかペンダントを取り出した。
ロケットペンダントのようだ。
十字架の模様が彫ってある。
「このペンダントを首に下げて、君の部屋の窓から月に向かう気持ちで飛ぶニャ。そうすればニャーが連れてってあげるニヤ。期限は明日の夜までニャ。月が出てる時に飛んでくれニャ。よく考えてみることニャ。」
猫はそう言うとボクにペンダントを差し出した。
ボクは流れに任せてそれを受け取った。
猫はボクが受け取ったのを見て満足そうにニヤリと笑ったかと思うと、再びお湯の中に入って行った。
猫はとぷんっと音をたてて、あとは静寂を残しただけ。
もう出て来ることはなかった。
日常に戻った瞬間だった。
うむ、静か。
そして寒い。
よく考えると今までずっと裸だった。
しかも窓全開。
ボクは窓を閉め、手の中にあるペンダントを脱衣所に避難させた。
そしていそいそと湯舟に入る。
おー温かい。
再びため息が漏れる。
口が暇になったので適当なメロディーをひたすら「ラ」だけで歌う。
ある程度温まったところで、お風呂から出た。