君に、会いたくなった
 下駄箱まで来て気が付いた。



「…雨」



傘、持ってきてないや……


「あ、美菜…だっけ?」


え…誰?


「あ、海先輩。」


てか呼び捨てかよ!


「わー、名前覚えててくれたんだ!どうかしたの?傘無いの?」

「はい。」


 好きと気づいたのにも関わらず、さっきから出てくるのは冷たい言葉ばっかり。


はぁ…はやく止まないかなー。


 そしたら、急に雨が止んだ。

 違う。傘だ。


 地面に映る薄い影で分かった。

 
 ゆっくり、顔を上げた。



「俺の傘に入れてあげる。」

 
 そう言って、海先輩は微笑んだ。



「あ、りがとうございます。」

 

 嬉しくて、恥ずかしくなって、語尾が小さくなっていく。

 
 先輩がゆっくりと歩き出した。それを私は追いかけるようにして歩いた。
 


先輩は思った通り優しい人だった。


こんな私の歩幅にちゃんと合わせて歩いてくれる。


「先輩…」

「んー?」

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