ありのまま、愛すること。
今考えても、考えられないことです。

そんな、つぶれそうな会社に2000万円を借用証書もなしに貸すなどということは、私だったらできなかったでしょう。

私は慌てて、その社長にお礼の電話を入れました。そのとき、社長は私にこう言ってくださいました。

「あなたはね、あなたの会社はこんなことでつぶれるような会社じゃない。絶対に、日本の外食を背負っていかなきゃいかん。だから、ここは、とにかく助けさせてくれ」

このとき、「体の重い亀」という言葉が頭に浮かびました。

その日の日記に、

「体の重い亀になろう。こういう恩を俺は一生忘れない」

と書いてあります。

一歩ずつ、一歩ずつ歩いていく。

慌てず、道端の石ころにも道端の一輪の花にも、一つずつ目をかけていこう。

そう、心に決めました。

どんなに会社が大きくなろうとも、絶対にうぬぼれてはいけない。

どんな方がいらしても、誰に対しても、決して横柄な態度をとってはいけない。

このときの酒屋さんの2000万円を、私は忘れてはいけないのです。



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