ありのまま、愛すること。
こういう紙一重の差で選択肢が変わっていく、そしてそれはいい方向にドラスティックに─。

こんな出来事が起きるとき、私は母の存在を強く感じ取るんです。

「お袋が守ってくれているんだ」

見えざる手が、差し伸べられているんだと。

そうして考えてみると、母親が亡くなったことも、父親が会社を清算したことも、自分にとっては、いい意味の必然だったのではと考えるようになったんです。

もしも父の会社がなくなっていなければ、私はハングリーという言葉の意味を知らずに来たでしょう。

幼いころに裕福な暮らしを味わっている。

そこからどん底の貧乏生活を経験したから、そこから這い上がりたいというハングリー精神が強く芽生えたと思うんです。

1992年にオープンした居食屋『和民』は、家庭の食卓のように安心できる手づくりの料理と、温かい笑顔があふれるような空間にしたいと思っていました。

そんな思いで、店のイメージ・デザインを「もう一つの家庭の食卓」としたのです。



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