ありのまま、愛すること。
では、その家庭の食卓に並ぶ料理は、お母さんが家族のためにつくるようなものでなければならない。

健康に気を遣ったもの、子どもがすくすくと育つようにと考えたもの、安全性の高いもの、手の込んだ愛情深いもの……。

イメージはどんどん膨らんでいきました。

 ─時間は夕方6時半。お姉さんと弟は二人でお母さんの帰りを待っています。

「おなかすいたなぁ」

弟がつぶやきます。

外からバタバタという足音が聞こえてきました。

あのそそっかしい走り方はお母さんです。

「ごめん、PTAが長引いちゃって」

お母さんが謝っているところにお父さんが帰ってきました。

こんなときは家族で居酒屋へと、相場が決まっています。

気持ちのよい元気な声に迎え入れられて、お店に入ります。

お父さんとお母さんはビールで乾杯します。

お父さんはビールのあと、自分のボトルを出して、まるで自分の家のように水割りを飲み始めます。

今日のおかずは「キンピラ、肉じゃが、お刺身、鶏の唐揚げ」です。

当然、お新香もつきます。

お父さんだけは酒の肴として「ブリの煮付け」を頼みました。今日学校であったことをお姉さんと弟が一生懸命お母さんに報告します。

お父さんは微笑みながらその話を聞いています。



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