ありのまま、愛すること。
こんな店をつくりたかった。こんな場面を提供できたら、心より幸福だと思ったのです。

そのサービスは心がこもっていなければいけない。

店は豪華でなくても、掃除を行き届かせ、そして価格は安くなければいけない。

毎日の、普段着の食事の楽しみを、家族で、仲間で、恋人同士で楽しむ場。

1週間に1回行きたくなる、それぞれの人にとっての生活の一部であり、家庭より半歩進んだ快適な空間を目指そうと、そう思いました。

かつて母が用意してくれた、温かい料理や、それを囲んで交わした家族の会話、そして笑顔……安らぎに満ちた幸せな、懐かしい光景が、私の頭に浮かんでいました。



ちなみに、この和民の「家庭の食卓」という考えにおいて、欠かせない存在があります。

それは、下調理をしてくださる、パートさんたちです。

今から35年前、居酒屋チェーンの急速出店が始まりました。その背景はいろいろとあるのですが、なかでも「冷凍技術の進歩」が大きく功を奏したと私は思っています。

今まで職人でなければできなかった調理が、学生のアルバイトさんが「冷凍食品を煮る、焼く、揚げる」だけで、ある程度のレベルにおいて可能になったことは、業界の急成長には欠かせない要因でした。



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