ありのまま、愛すること。
「あなたとお母さんのあいだには、私は入っていけなかったわよ」

最近でも姉は、よくこう言います。

姉は姉で父と仲良しでしたが、母と私の関係には、つけいる隙もなかったのでしょう。

先日、姉にこんなことを言われました。

「あなたとお母さんの、二人の合言葉があったのよ」

言われて、私も思い出しました。

母と私は、よく会話の最後に、「ね」をつけていたのです。

たとえば、「おやすみなさい」は「おやすみなさいね」と。

二人だけの合言葉ではないですが、お互い言い合っていました。

姉がそれをマネしようものなら、私は怒ったそうです。

「それは、ママと僕だけの合言葉なんだから、お姉ちゃんは使っちゃダメ」

母は、私にその合言葉「ね」を、

「美樹さん、大好きだよ」

という意味だと説明していました。

それで始まった合言葉ですが、私も当然、

「お母さん、大好きだよ」

という思いを込めていました。

その二人のあいだには、姉も、父でさえも入ることはできないと思って誇らしか
ったし、そうして母を独占できているのが、私には喜びだったんです。
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