死せる前に君を斬る
Ⅰ
馬車をひく男が人質の少女に声をかけた。
「姫君、レスピアンに向かう御心境は?」
可笑しそうな口ぶりにアサーラはそっけなく答えた。
「これ以上ひどいものはないわよ。どうせ死にゆく場なんでしょ」
「はは、死にゆく場か。恐れはないのか」
「何故恐れるの?」
「まったく、気丈な方だ。」
男は楽しげに口笛を吹きながら馬の速度を速めた。
もうすこしで景色が変わりそうだ。
「フィルデラの姫よ、外を見たまえ。これがレスピアンだ」
アサーラの視線の先にはレスピアンの景色が広がっていた。
< 1 / 13 >