死せる前に君を斬る


「逃げることも」



ひんやりとした感触がアサ―ラの首筋に伝わる。



「自ら命を絶つことも」



耳元で優しく囁くように男の言葉が響く。




「あなたはできない」



横を見たアサ―ラの瞳に男の瞳が写りこむ。





石造りの冷たい部屋の中で

青年が無機質に無表情のままの少女の首に刃をあてていた。






その光景は異様で



そしてなぜか美しかった。



< 10 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop