死せる前に君を斬る
「───なんて。」
ふっと、男は笑うと
刃で少女の首にスッとかすかに
切り傷を入れた。
にじみ出た血を指に付けるとそれを少女に見せた。
「血です、あなたの」
それを見たアサ―ラは微かに眉間にしわを寄せた。
「死ぬとか簡単に言うな。」
「私は自ら死のうなんて思ってないわ。」
「そうですか」
少し困ったように男は笑うと
扉の前まで歩いて行った。
「あなたは人質です。
いつ殺されても可笑しくない。」
男の言葉の意味が分からないというように
アサ―ラはもう一度窓の外を見た。
「それでは失礼致します」
一礼した後、男は重たそうな鉄製の扉を閉めて部屋から出て行った。