死せる前に君を斬る
Ⅱ
使用人を連れてくることさえも許されなかった少女に何の抵抗ができようか。
けれど少女はしっかりとその目で敵国の王を睨みあげた。
「よく来た。フィルデラの第一姫
アサーラ・シャルベリアン。」
王座に堂々と座り、人質を見下げたレスピアンの王は
いやらしく口の端を釣り上げた。
「お前の首には常に刃があてられている。
それはいつでも君の命を絶つことができる
ということを忘れんようにすることだ。」
そんな脅しの言葉にも動じずアサーラは
王を睨み続けた。
「私を怨んでどうする?
もう少し可愛げがあれば側室に迎え入れてやろうものを。
命だけは助けてやるぞ。」
優しく問いかけるように呟いた王は
右手をあげ、仕え人を呼んだ。