FRESH LEMONADE
入学式
体育館に集められたあたし達新入生は、慣れない環境への不安や期待を抱きながら、整然と着席し、式の開始を待っていた。


「…はぁぁ」

あたしの隣に座った彼は、座ると同時にため息をついた



「…あのさ」

「はい?」

「それ、いつ買った?」


彼はあたしの上履きを指差した


「…あ、さっき正門前で」

「マジで!?気付かなかったわ…」



見ると彼はまだ革靴
…土足のまま



「あの…明日も売ってるって…書いてありましたょ」


見兼ねたあたしはそう声をかけた



「あ、ほんとに!!じゃ、いーか」

「…大変ですね」

「いや、でも明日買うし?」

「じゃなくて!!!!その……目立つのも大変なんだなーって」


彼が上履きを買いそびれた理由…

きっと、周りに群がった彼のファンのせいだ

人込みをかき分け、前に進むのがやっとだった彼に、上履きの案内を見る余裕なんてあるはずない


「あぁ…そっちね。ま、もう慣れたけどな?俺なんかどーせ顔しか価値ないし(笑)」


“顔しか価値がない”

普通の人なら言えないような発言。

でも、彼ならその発言も許される。

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