山荒の鳴く夜
「ふふ…」

よろめきながらも平助は刀を構える。

「成程…三浦、確かにな」

情に甘えて生き延びようなどと、俺らしくもねぇ。

彼はこの瞬間覚悟を決めた。

「背後から斬られるのは武士の恥…さぁ来いや三浦!真っ向から俺の首とってみせろ!」

「おぉぉおぉおっ!」

再びかつての仲間達に包囲されつつも、平助は鬼神が如き形相で刀を振るう!

その鬼気迫る迫力に、数々の戦場を潜り抜けてきた新撰組の隊士達が怯み、恐れをなし、迂闊に手を出す事が出来ない。

…だが平助が三浦から受けた傷は深手だった。

放っておいても出血によって、やがては倒れるであろう傷。

(今度こそ…迎えが来るか…)

安静にしていれば助かる目もあろう。

しかしこの状況下で、それは叶う筈もない。

霞む目で、いよいよ平助は腹を括る。

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