山荒の鳴く夜
流石に我が目を疑う。

こんな硬く金属のような体毛を持つ獣など、永倉は見た事も聞いた事もない。

何より二足歩行で体毛を飛ばして人間を襲うなど…それでは獣というより妖怪や化け物の類ではないか!

信じ難い生物を目の前にして、百戦錬磨の新撰組組長達も動揺を隠せない。

獣は尚も毛針を周囲に撒き散らして隊士達に手傷を負わせる。

最早御陵衛士の粛清どころではない。

初めて遭遇する、禍々しい殺気を放つ正体不明の獣。

それは、人外と呼ぶに相応しい獰猛さであった。

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