山荒の鳴く夜
人斬りの仕事。

任務の話となって、椿から先程までの狼狽ぶりが消える。

任務に対しては真摯に、そして知らぬ者が見れば身震いするほどに、椿は研ぎ澄まされた表情を見せる。

まだ二十一という年齢ながら、椿は超一流の剣客であった。

若輩ながら、人斬りの際には手練の侍でさえも怯むほどの凄味を見せ付ける。

その凄味に桂さえもやや圧倒されながら。

「ここ数ヶ月、京で長州派の同胞が次々と殺られている」

背筋を伸ばしたまま、桂は真っ直ぐに椿を見て言った。

「殺られたのは片手で足りる数ではない…」

「相当な使い手ですね。新撰組辺りでしょうか。一番隊組長の沖田 総司などは手強いと聞きます。私は直接相対した事はありませんが…」

椿の言葉に、桂は緩々と首を横に振った。

「いや…沖田 総司は先日他界した。労咳だったと聞いている」

確かに慶応四年五月三十日、沖田 総司は肺結核により亡くなっている。

「それに殺られたのは志士だけではなく、幕軍の兵もだ。僅かに京に潜伏している幕府方の者達も、次々と殺害されているらしい」

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