山荒の鳴く夜
椿の眼光がより鋭くなった。

細目の男はそれでも笑みを絶やさない。

むしろ嘲笑うような色を見せる。

「おぉ…怖い怖い…志士様ってのは何かにつけて、すぐ抜刀したがる…畜生でも無駄に殺しはしねぇってのに、獣にも劣る所業って奴だな」

「貴様ぁっ!」

彼女は涼しい顔に似合わず激情家だ。

細目の男の挑発に容易く乗って、愛染虎壱を抜き放つ!

その切っ先をギリギリまで見極めた上で。

「!」

細目の男は椿の初太刀を回避した。

元々牽制の為の一撃。

かわされた所で問題はない。

しかし、僅か一寸を残しての回避。

その見切りの鋭さに、椿は驚愕していた。

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