山荒の鳴く夜
細目の男の痩躯が、大萩屋の引き戸を突き破って外まで吹き飛ばされる!

その事に。

「ちっ…」

椿は舌打ちした。

見た目には技が決まった結果、吹き飛ばされたかのように見える。

しかし本当に決まったのならば吹き飛びはしない。

椿の愛刀が体を貫通している。

つまり吹き飛ばされたのではなく、細目の男が自ら後方に飛んで逃げたのだ。

あの椿の突進を、反射的に回避した。

彼女の事を獣以下だのと罵ってはいたが、当人はまるで獣じみた動きだ。

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