山荒の鳴く夜
それは、どんなに人間が鍛錬に鍛錬を繰り返して鍛え上げても不可能なほどの動き。

獣の反射神経と人間の洗練された動き。

その双方を併せ持った人外だけに可能な敏捷さだった。

まさに目にも止まらぬ速さ。

その動きを視認する事すら出来ないまま、椿と平助はあっさりと背後をとられ。

「くっ!」

一拍遅れて振り返り、人外の攻撃に反応しようとする。

そこに飛来したのは飛び道具。

尖端を鋭利に研ぎ澄まされた、人外の背面の毛針!

それに反応できたのは、二人が一流の剣客だったが故。

並みの侍では、人外の毛針を急所に受けて致命傷を負っていたに違いない。

椿と平助は素早く抜刀して、人外の毛針を受け太刀で弾いた。

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