山荒の鳴く夜
毛針を弾き、素早く反撃に転じようとするも。

「ちぃっ…」

平助が舌打ちする。

既に元いた場所に人外はいなかった。

俊敏な動きで二人を翻弄しつつ、隙を見計らって鋭利な針を飛ばす。

それが人外の戦術のようだった。

闇に紛れて、死角に隠れて。

まさしく妖怪変化、神出鬼没だ。

…暗がりの中から声がする。

「てめぇら人間は俺達人外を忌み嫌うがな…下らん主義思想、意地の張り合いで同じ種族同士斬り合い殺し合う、てめぇら人間どもの方がよっぽど忌々しい生き物だぜ」

くくっ、と。

また人外は喉を鳴らすように笑う。

「てめぇらみたいな業の深い生き物はいっそ醜く殺し合って滅びてしまえ。てめぇらに代わって、この国は俺達人外が貰い受けてやるからよ」

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