山荒の鳴く夜
「!」

思考の途中で、椿はハッとする。

僕達?

普段使わない一人称を無意識のうちに使ってしまった事に、自分でも驚いてしまう。

何故女の自分が『僕達』などと…。

「…私は…疲れているのか…?」

額に手を当て、ほぅっ、と溜息をつく。

少しおかしい。

敵方の平助に対して『藤堂さん』などと呼び、敬語を使ってしまった事もあった。

普段はこんな事などなかったというのに。

疲れているというより…。

「まるで別の誰かが私の中にいるようだな…」

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