山荒の鳴く夜
山荒の事をシイと呼ぶから…それだけであのシイという男の正体が人外と考えるのは早計だろうか。

しかし『シイ』というのはそこら辺でよく見かけるような名前ではない。

偶然の一致と片付けるのは、いささか難しい。

むしろシイがあの人外と疑ってかかるのが普通だろう。

…椿は考える。

一旦態勢を整えて、再び今夜夜回りに出よう。

恐らく人外も、日のあるうちには出歩くまい。

そして今度遭遇した時こそケリをつける。

あれ程凶暴な化け物を、いつまでも京に野放しにしておく訳にはいかなかった。

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