山荒の鳴く夜
平助の胸に去来する虚無感。
しかし、彼は何もそんな物思いに耽る為にこの油小路に来た訳ではない。
「…奉行所の知り合いが言ってたっけな…下手人ってのは必ず罪を犯した現場に舞い戻ってくるってよ」
肩越しに背後を見る平助。
そこには、つり上がった目の細身の男…シイが立っていた。
「はて?下手人?おかしな事を言うんだな、兄さん」
とぼけたふりをするシイ。
勿論平助はシイとは初対面だし、『シイ』というのが山荒の別名などとは知らない。
だが何の迷いもなく。
「!」
平助は振り返り、腰の刀を抜刀した。
しかし、彼は何もそんな物思いに耽る為にこの油小路に来た訳ではない。
「…奉行所の知り合いが言ってたっけな…下手人ってのは必ず罪を犯した現場に舞い戻ってくるってよ」
肩越しに背後を見る平助。
そこには、つり上がった目の細身の男…シイが立っていた。
「はて?下手人?おかしな事を言うんだな、兄さん」
とぼけたふりをするシイ。
勿論平助はシイとは初対面だし、『シイ』というのが山荒の別名などとは知らない。
だが何の迷いもなく。
「!」
平助は振り返り、腰の刀を抜刀した。