山荒の鳴く夜
「成程…血の匂いね…」

シイが懐に手を忍ばせる。

警戒して刀を構える平助。

得物を取り出すのか。

しかし彼の予想に反し。

「あぁん?」

シイが懐から出したのは一本の唐辛子だった。

彼はそれをおもむろに口元に近づけ。

「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

思い切り噛み千切る!

当然の如く火を噴くような辛さが口の中に広がる。

味覚というよりは痛みに近い辛さ。

突飛な行動に、平助は身動きが取れない。

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