山荒の鳴く夜
顔中に夥しい発汗。

荒くなる呼吸。

そんな中。

「俺はちょっとばかり風変わりでね…」

シイは涙目になりながら言う。

「刺激がないと『本当の姿』になれねぇんだよ」

ゾワゾワと、シイのボサボサの髪が逆立っていく。

全身に黒い体毛が生え始め、瞬く間に覆っていく。

両の眼が赤い光を湛え始め、見る見るうちに血の色に染まっていく。

首筋から背中一面にかけ、一尺ほどもある長い針が伸びていく。

まさしく異形。

獣でも人間でもない。

変貌したその姿は、まさに人外だった。

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