山荒の鳴く夜
「くっ!」

矢継ぎ早に飛んでくる毛針を、平助は回避し、受け太刀する。

剣先を常に揺らして変化にいつでも応じられるようにする『鶺鴒の尾』だからこそ対応できる攻撃。

そうでなければ、とうの昔にあのシイの毛針に串刺しにされている。

「流石新撰組の組長さんだな。俺の毛針をここまでかわし続けられるなんて」

獣の顔で不敵に笑うシイ。

「よく言うぜ」

尚も剣先を揺らしながら、平助は立ち止まる。

彼ほどの剣客が見破れぬ筈がない。

シイは遊んでいる。

本気を出さず、わざと嬲るようにして平助を翻弄しているのだ。

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