山荒の鳴く夜
僅かな動揺を読み取って。

「参る!」

鋭い踏み込みと共に椿が動いた!

得意の右片手一本刺突!

紫電の如き動きで、一気にシイの間合いへと侵略する!

しかし。

「けっ!」

僅かに狼狽はしていても、人ならざるもの。

シイは椿の刺突を余裕を持って回避し。

「小娘が!」

きっちりと置き土産の毛針まで見舞う!

「うっ!」

直撃こそしないものの、毛針は椿の肩を掠める!

鮮血で着物が汚れ、椿の端正な顔が苦痛に歪んだ。

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