山荒の鳴く夜
危なかった。

シイの偽らざる本音だ。

二度目の右片手一本刺突は、一度目よりも明らかに精度を増していた。

そしてそれは、見ていた平助も同意見。

(放つ度に精度を増している?)

最初はそうも思ったが、どこか違う。

精度を増しているというよりは、同じ技を別の人間が繰り出しているような、そんな感覚。

…考えが纏まらない内に、椿は再び立ち上がって刺突の構え。

「たわけだな。何度打ってもその刺突は俺には通用しねぇよ」

そう呟くものの、シイは内心不安を抱いていた。

もしかしたら…三度目の刺突は、更に精度を増しているのではないか。

今にシイを凌駕させるような技を見せるのではないか。

そう考えていた彼の目の前で。

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