山荒の鳴く夜
刀を下げ、一息つき。

天才剣士の背中から殺気が消えた。

「沖田…」

その背中に、平助は声をかける。

「沖田なのか…?」

その声に振り向き。

「しばらくです、藤堂さん」

椿の顔をした一番隊組長は、柔和な笑みを浮かべた。

平助が見慣れた、子供のような…しかし人間として大切な感情の一部を失ったかのような『怖さ』を秘めた、沖田 総司の笑顔。

人外の返り血を浴び、凄惨な姿となりながらも、その笑顔に平助は懐かしささえ感じる。

今はもう数える程度しかいなくなってしまった、同胞の一人に再会した気分だった。

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