真っ赤な果実
―十年前―
「もう無理ね。」
「…あぁ。」
「じゃあ、これにサインを…。」
深夜三時。
静寂に包まれた真っ暗な部屋の中で、2人の男女がある話し合いをしていた。
それは、友里の両親だった。
子供たちは完全に寝付いたと思っていた。
しかし、廊下には二つの小さな影がひっそりと話を聞いていた。
七瀬 友里 3才
七瀬 友輝 10才
「ゆーり、喋っちゃだめだよ?」
「うん。」
シ―っと人差指を口にあてた。
幼い友里は話の理解なんて全くできなかった。
しかし、友輝はもう10歳。
2人の雰囲気からうすうす感じとっていた。