真っ赤な果実



「は?もう一回言って。」


父方の祖母、七瀬美雪
母方の祖母、櫻井夏子


2人が友里と友輝を、一人ずつ引き取ることで、親戚の意見は一致していた。



「嘘だ…。
嘘だ!嘘だ嘘だ!!

誰か嘘だって言ってよ!!

僕は何も悪いことしてないじゃん…。

もう僕の大切なものをとらないで…。

お、ねがい…だから…。」



何があっても泣かなかった友輝が、初めて涙を見せた。



君たちのことを思ってだと説明する大人たちに、金銭面の問題だろ!と友輝が問うと、誰も口を開かなくなった。



友輝にはどうすることもできなかった…。
だから今は黙って従うことにした。


「…お兄ちゃん?」

「ゆーり。離れてても、毎日会いに行くから…。」



友輝はその約束を、他県の大学に進学するギリギリまでずっと、守っていた。



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