プリン・ア・ラ・モード
 慌てて周りを見渡してみる。

 でももちろん、誰も私のように立ち往生してる人なんていなくて。

「あっ!!」


 そして運の悪いことに、携帯の充電が切れてしまっていた。


「うっそ……」

 最悪、最悪、最悪。

 


 とりあえず、元来た道を戻ってみようと思うけど、もう1つ忘れていたことがあった。


「私、方向音痴じゃん」

 何かの小説のワンシーンのようで。何も分からない私に唯一分かることは、かなり状況が悪いこと。


――――どうしよう。

 ひたすらこの5文字が頭の中を行き来している。

 完璧に思考停止状態。
 こんな時に自慢の頭脳を使えないのは情けない。

 でも。

 1度パニック状態に陥ると、あの時の事を思い出して何も考えられなくなる。

 仮に考えられたとしても、悪いほうにばかり考えてしまう。

 これが私のマイナス思考の原因かな、とか冷静に考えられる自分が居たりして。

 あぁ。

 完璧にあの時と同じだ。

 慌てている自分と、冷静な自分が脳内に同居している。

「もう、うんざり」


 とりあえず、どっかベンチを見つけて座ろう。

――――でも、歩き出せなかった。
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