午睡は香を纏いて
「これから向かうオルガの邑というのは、殺戮者の手から逃げ延びた者たちが新地で作った、新しい邑なんだ。
でも、そこは仮の邑だと、レジェスたちは考えている。
いつか、リレトの手から真のオルガの邑を取り返すんだ、ってね」

反対側に座しているレジィを見た。
囲む人たちと親しげに言葉を交わしていて、でもあたしの視線に気付いて、にこりと唇を持ち上げた。
あたしを命がけで守ってくれたこの人の笑顔の裏には、深い悲しみがあるんだ。


「サラは彼らに賛同して、共に行動し、手助けすることを誓っていた。
記憶のないカサネにそれを引き継ぐことを頼まなくてはいけないのは、心苦しくもあるけど、手伝って欲しい」

カインの言葉に顔を戻した。


オルガの邑人って、大勢いるの?
リレトの抱えている軍隊の規模は分からないけれど、一つの邑が反旗を翻して、勝ち鬨を上げられるというのは、難しいことなんじゃないの?

その中にあたし一人が加わったところで、何の足しにもならないだろう。
この世界のしきたりも何も分からないのだから、お荷物にはなるかもしれないけど。
でも、そんなあたしが役に立つというのなら。

レジィの、ここにいる人たちの笑顔に潜む陰りを、少しでも拭える手助けができるのなら。


「あたしに出来ることがあるなら、したい」

カインは髪を掻きあげて、隔てるものをなくした片目を真っ直ぐあたしに向けて、ありがとうと言った。



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