午睡は香を纏いて
「う……わ……」


目の前に、まるで猫、ロシアンブルーのような子がいた。
つんとした、近寄りがたい空気を纏った、猫だ。
 
目尻に鮮やかな緑のシャドウを差した瞳を大きく見開き、紅をさした唇も物言いたげに開いている。

え? これって、本当にあたし?

おずおずとその場で一回転してみると、目の前の子もふわりと衣装の裾を揺らして回ってみせた。


「あ、あたし……?」


ぽかんと口を開ける。
と、目の前の子も、馴染み深い間抜けな表情を浮かべた。

それを見て、ああ、本当にあたしなんだと思う。

だけど、やっぱりどこか信じられない。


「すごいだろ、オレ」


角度を変えながら己を確認しているあたしに、セルファが自慢げに笑った。


「すごい! セルファって本当にすごいよ! 天才なんじゃない!?」

「知ってるっって、そんなこと」


最初は恥ずかしくて仕方なかった衣装も、不思議と気にならない。
体のラインは相も変わらず露なのだが、全身につけた大振りな装身具のお陰か、さっきほど目立たなく感じるのだ。


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