午睡は香を纏いて
横に並んで立ち、しばし眺めたセルファが言った。


「カサネって体に凹凸がないからさー、中性的な感じだよね。
少年神官でも通るよ」

「エエ、ソウデショウトモ」


真っ直ぐに突いてきますね、セルファさん。

でも確かに、自分でも感じてはいた。
男のフリをしても通用するってことは、元々女性らしさに欠けてるんだな、と。
多少なりとも女らしさがあれば、あたしはただ髪が短いだけなのだから、男のフリなんて難しい話だと思うのだ。


「あ。卑屈にとったね? 誉め言葉だったのに」

「ええー。誉めてなかったよ、今のはどう捉えても」


頬を膨らませ、つん、と顔を逸らしてみせた。


「そうかなあ。性別を感じさせないって神秘さが増していいと思うんだけど」


頭を掴まれ、くり、と強制的に正面に顔を戻される。
確認するように、セルファの視線が動く。


「うん、やっぱりいいよ。今の君は間違いなく、誰がどう見ても、ゼユーダの新しい巫女姫だ。
いいかい? 堂々と胸を張っているんだよ。
ボロを出したらどんな事態になるか分からない。
自分を巫力のある巫女姫だって信じるんだ」


鏡越しに、セルファが言い聞かせるように優しく言う。


「あ、は、はい」


そうだ。あたしはこれからゼユーダなんて知らない国の巫女姫として振舞わなくちゃいけないんだ。

それも、かつて自分の親だったという人たちの前で。

そのことに記憶も思い出もないけれど、でも、それを思い出すために。


「ち、ちょっと震える、かも」


胸元でぎゅ、と握った両手。
重なったブレスレットがシャラシャラと小刻みに鳴った。

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