午睡は香を纏いて
「あ。ここでいっか」


腰元の、布の合わせ目の部分に小さなポケットのような隙間があった。
そこに対球を押し込んだ。上から押して、ふくらみで存在を確認する。


「急にどうしたんだよ、ユーマ?」


廊下へ繋がるドアからひょいとセルファが顔をだした。


「い、いやちょっと忘れ物っていうか。でももういいの」

「ふうん? まあいいけど、行こうよ。カインはもう下に行っちゃったよ」

「うん、行こう」


セルファと並んで下へ降りていく。もうシルさんの姿はなかった。


「忘れ物って、何だったのさ?」


セルファの質問に、ええと、と言い躊躇う。
昨晩のことをどう説明したらいいのだろう。というか、何から話せばいいんだろう。
長くなる話だし、帰ってきてからゆっくりと説明したほうがいいだろうか。


「あの、あとで話すね」

「ん? うん、わかった」
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