午睡は香を纏いて
「じゃあ、ユーマから聞いておくよ。とにかく、行ってくる。帰ってくる時間は分からない」

「あいよ。おや、あんた、今日はえらく綺麗にしてるじゃない、か……」


あたしを見たシルヴェーヌさんが息を飲んだ。


「オレの腕、すごいだろー」

「ああ、こりゃあ見違えたねえ……。しかし、何だろうね。どこかで見た雰囲気なんだけどね」

「ふうん? とにかく、行ってくるよ。じゃあね、マダム」

「い、行ってきます」


遠い視線を投げかけてくるシルヴェーヌさんに頭を下げて、表へ出た。


「うわ、あ……」


そこには豪華な設えの馬車が一両と、整った毛並みの馬が二頭並んでいた。
御者台に腰掛けていた男の人が一人と、馬を引いた、セルファと同じ騎士の格好をした人が二人、こちらに顔を向けている。
誰だろう。本物の騎士さん、のはずないよね。


「三人とも忍人だよ」


あたしの疑問がわかったのか、耳元でセルファがそっと教えてくれた。
ああ、オルガの人たちなのか。
慌てて頭を下げると、三人とも丁寧すぎるお辞儀を返してくれた。


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