午睡は香を纏いて
「そういや、さっきマダムが言ってたことって何さ、カサネ」


思い出したようなセルファの言葉にはっとする。
そうだ、大事な話があったんだった!


「あ、あのね。昨日の夜、シルヴェーヌさんと話す機会があって……」


二人に、シルヴェーヌさんと過ごした時間について、話した。



「――手を組む、ね」


 話を聞き終わった後、カインはセルファと顔を見合わせて肩を竦めた。


「マダムにはオレたちから話を持ちかけるつもりだったのに、拍子抜けだねー」

「へ? そうなの?」

「そうなの。彼女はあの辺りの実力者で、動かせる人数もたいしたものなんだ。
そんな人が敵地のほど近くにいるんだ。仲良くできたらしめたものでしょ」


聞けば、シルヴェーヌさんはブランカでも名の知れた女傑で、大通りの影の支配者のような存在なのらしい。
今でこそ息を潜めているが、大昔(一体シルヴェーヌさんはいくつなんだろう?)は一家を従えた女親分だったとか。
確かに異様な迫力はあったけど、そんな過去があったなんて。ただ驚くばかりだ。


「すんなりいきすぎてることが多少気になるが、彼女の人品についてはセルファが保証してるしな。信じるとしよう」

「あの人は大丈夫だよ。なにより、敵だっていうなら、オレとレジェスは三年前にもう死んでるよ」

「あ。シルヴェーヌさんに助けられた、って聞いた。二人とも大怪我してたんでしょう?」


思い出して訊けば、セルファは眉間にシワを刻んで皮肉に笑った。


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